導入する目的を明確にして必要な機能を選ぶ

課題・優先順位を明確にしてから選び始める

近年、「HRtech」という言葉が人事部門を超え、経営の関心事になってきています。「HRtech」中のテーマの一つとして、人材情報の管理方法が着目されており、人材情報を管理・活用することで業務の効率化だけでなく、タレントマネジメントなどの育成分野、多様な人材を採用するための支援ツールとして、人材管理システムの導入が多くの企業の中で検討されています。しかし、実際の企業の現場では、言葉が先行しており、何のために人事関連のデータを管理・活用するのか議論しつくされていないケースがあるのではないかと思います。 特に、いわゆる大企業の人事部ほど必要性や目的が議論されておらず、システムの価格や導入にあたってのサポートなどコスト・工数の面での比較になっていることも、しばしばあるのではないでしょうか。または、人事情報の一側面からのメリットだけで議論が進んでおり、導入はしたものの、その恩恵を受けられるのは、人事部の特定の課やチームだけであるといったことも発生しているかもしれません。大企業では、それぞれが課などの組織単位に細分化されており、各領域の業務を担っているのではないかと思います。 まずは、各領域の課題感を共有し、入社から退社までの人事ストーリーを俯瞰して見ながら、優先順位の議論をすることが重要になります。優先すべきは、人事手続き業務の効率化なのか、健康管理なのか、優秀人材を獲得なのか、経営幹部候補の育成なのか。

将来、発生し得る人事課題に意識を向ける

優先順位といっても、各領域の担当者ないしは責任者が集まり、それぞれの課題感を出し合ったところで、どのように優先順位をつけていくべきか話が進んでいかないこともあるかと思います。優先順位を決める際には、当たり前ではありますが、「会社が向かおうとしている方向へ進んでいくにあたり、将来、どのような人事課題が起こり得るだろう?」という視点が必要になります。それを議論するにあたっては、景気や人口動態などに関する外部環境の情報、自社内の現状把握が必要になります。 まずは、データの数値として表れてくる自社の従業員がどのような働き方をしているかなど、基本的なことから把握することが必要だと思います。自社の従業員が、どのように成長していかなければいけないのか、どのような働き方が求められてくるのかを考え、議論した末に優先順位が決まってくるものではないでしょうか。データの数値を眺める前に、数値に表れてくる従業員に目を向け、働く環境、働き方が、どのようにあるべきかを考えるところから始めることが重要です。 超高齢化社会を迎え、老若男女問わず、一人ひとりの人材の価値を最大限に発揮・伸長してもらうことが必要な現代において、人事戦略は重要なテーマとなっています。人事戦略をつくるために人材管理システムを活用することが必要であることは間違いないでしょうが、優先すべきテーマは企業によって異なることを忘れてはいけないでしょう。